2022年3月25日金曜日

ニセモノ食材について

今日は食材全般(調味料含)の話題…テーマは「ニセモノ食材」です。
一緒くたにニセモノと表現していますが、成分的に異なるもの・かさ増し要素のあるもの・ニセモノというワケではないけれど類似パッケージのせいで消費者が間違いやすい…等、対象範囲を広げてサンプルを選んでいるので一部は意味的に「ニセモノ」でないものも混ざっています

尚、調べ始めて気づきました。取り上げ紹介したいものがあまりにも多すぎますが時間制限もあることから今回取り上げるサンプルはごく一部…4点のみです。
今後も不定期に何回かにわけて続編まとめていこうと考えています。


 1  まず最初に 
本題に入っていく前にこの”まとめ”のスタンスを明確にしておきます。

個人的に言うと本物ではない食は昔から極力避けていたので今も全否定なんですけれど、ここで紹介していく「ニセモノ」って現代人の生活スタイル・経済性・流通・効率その他色んな要素が絡んで辿り着いた1つの結論であることも事実ですからニセモノつかまされた云々や健康を害する…などの問題は一時置いて、どうして肯定されているのか・メリットの面もしっかり考えないといけないといけません。

結局のところこれらは歪であっても大多数が求めた食のカタチですから、そのメリットを社会的に全否定することになったら平均的な1食あたりの価格が桁違いに上昇するでしょうし「食べられなくなる人」で溢れる厳しい世界になる…という懸念も当然出てきます。

ですから現時点ではそれは必要なもの…という意識を持ちつつ
徐々に改善を加えて安さと安定供給そして何より安全性の確保などなど
それを目指して絶賛試行錯誤中の…今はその過渡期にいる状態。
という判断で接するのがちょうど良いいと思います。

そのへんの事情を気に留めておいてたまに健康志向で本物を選択するという方が気楽でもありますしね。

 1-1  フードレプリケーター 
たとえばSFの世界にはフードレプリケーターというものが描かれています。
これは分子配列情報をもとに高分子化合物を一旦エネルギーに変換し、そして再物質化という流れで限りなくオリジナルに近い食品メニュー(実際にはトレー・お皿・コップに至るまで分子再配列により生成)を作り出せるものですが、これを予感させるものが現在の3Dフードプリンターです。
現実の話として扱うにはまだ的が遠すぎますしあと100年以上は先の話でしょうけれど最終到達点は間違いなくフードレプリケーターに化けてると思います。

食肉や野菜etc 自然由来の素材・食材をそのまま活かすケースや古来からの伝統を受け継ぐ職人の数を考えた場合、対する人口はあまりにも大きいです。
つまり自然由来モノ・伝統受け継ぐ職人さんの手によるもの…は絶対数的に全ての人の口には入りません。

ですからこれから先は否が応でもニセモノと向き合っていく必要があります。
遠い未来、食を奪い合うことなく平等に行き渡らせて平穏に人が生き残っていくための最適解「分子再配列により生成する食品」に頼るしかありませんし時代はそちらへ向かっています。

テクノロジーに依存する食…分子再配列なんて今の私達からすると明らかに本物とは違うものですが遠い未来、選択肢が他にない状況に陥ってるだろうことは容易に理解できます✿

個人的な意見ですけど、食文化を根底から否定するような今のニセモノはなんとしても避けたいですが分子再配列にまで踏み込んだ世界の食ならば別に気にはならないです。
そこまで昇華したテクノロジーなら間違いなく安全面は担保されているでしょうし食文化全般への敬意という部分でも「本物は得難い貴重なもの」として常識的に理解されてるでしょうから。。





 2  正体見たり! 
前置きが長くなりましたがここからが本題です。今回はサンプルを4つあげていきます。
最初に説明したとおり一緒くたに「ニセモノ」表現を用いてますが、これは次のものを指しています。
  • パッケージの類似で消費者が想定するものと間違いやすい
  • 成分的に異なるもの(製法が本物と同一でも主成分になる素材がデタラメ等)
  • 安価なモノを混ぜてかさ増しされているもの
  • 本物が本物のまま偽物へ転落?
今回のサンプルでは取り上げていませんが、製法の違いや混ぜモノ要素をわかりやすく記載(商品価値として差別化 & 品質や等級を明記)しているものも存在するので次回紹介します。

…と、いうわけで早速サンプルをあげていきます。


 2-1  オリーブオイル 
オリーブ園内で間近で撮ったオリーブ

普段の料理でも馴染みのあるオリーブオイルですが偽物率がすごく高いようです。
私自身、かつて一週間くらい日数をかけて日本国内にあるオリーブ絡みの仕事を行ったことがありますけれど、直接生産農家におじゃましてオリーブの栽培〜搾油現場の見学・直売所でオリーブを使用した様々な商品が並べられていたのを見てきた経験からして現在表に出ている数字・偽物率の高さに疑問を持ちました。

でも調べてみると、その偽物率の高さは日本のJAS規格の独特の扱いと流通の殆どを占めている輸入モノの数字に引っ張られている印象があります。
オリーブ園を少し高台から見下ろす


オリーブオイルは瓶詰めした国を原産国としているので、オリーブの生産地は闇の向こう…という生産地不明問題があたりまえのようですし、癖のないひまわり油やピーナッツオイルを混ぜてかさ増しした品質偽装も普通にあるみたいです。

また、日本のJASの取扱を見る限り正直なところ何が混ざっているのかわかりません。
下の表ではIOC基準でのランク付け・JASでのランク付けの2つを比較しています。
※左端の数字は便宜上つけたものですが”ランク”と考えれば良いです。
IOC(国際オリーブ協会)基準
 ◆ 精製を行っていないもの
 1  エクストラヴァージンオリーブオイル
 2  ヴァージンオリーブオイル
 3  オーディナリーヴァージンオリーブオイル
 4  ランバンテヴァージンオリーブオイル
 ◆ 合成(精製)オリーブオイル
 5  精製オリーブオイル(ヴァージンオイルを精製)
 6  オリーブオイル(精製オリーブオイルにヴァージンオリーブオイルをブレンド)
 7  未精製オリーブポマースオイル(絞りカスに溶剤を加えて抽出)
 8  精製オリーブポマースオイル(上記のものを精製)
 9  オリーブポマースオイル(上記のものにヴァージンオリーブオイルをブレンド)
JAS基準
 1  オリーブオイル
 2  精製オリーブオイル


この通り、IOC基準で9ランクあるオリーブオイルですが、日本のJASの定めでは2つにまで減っています。
ちなみに日本のJAS法の品質基準にはエクストラバージンオリーブオイルは存在しないので、酸度のみの評価方法です。そして厳格な官能検査は無し

結果的に日本で出回っているオリーブオイルは多少価格帯の高い商品(エクストラヴァージンを表示している)であってもその78.7%がニセモノになってしまうようです。

ただ… 日本人は本物のオリーブオイルの味に少し抵抗があるようなので、日本人の舌に合う味を出すための調合という好意的な見方もできます。
それは「偽物」なのかもしれませんが、日本人の好みに合わせた努力の結果とも言えますね。

本物のオリーブオイルを求めたいのなら・・・

  • 生産者がわかるもの(国内のオリーブ園直営の店舗等での購入)
  • 2000円〜/250ml の価格で品評会に名の出てくるようなもの

…であれば大丈夫みたいです。
そう言えば確かに直営店で買うエクストラは高いです。

国内のオリーブ園ではオリーブを使った様々な商品がありますが新漬もその1つです。
数が限られているので無くなったらそのシーズンの販売は終了… これもある意味「本物」の要素ですね。


 2-2  カロリーカット・マヨネーズ 


これはとても簡単です!
そんなマヨネーズは存在しません。そもそもメーカーもマヨネーズを名乗っていません
見た目の色とか粘度とかパッケージがマヨネーズに酷似しているだけです。

ではその正体は?…と言うと
サラダクリーミードレッシングあるいは半固体状ドレッシングと呼ばれるもので簡単に言えばドレッシングです。
まぁ、分類上ではマヨネーズも半固体状ドレッシングなのですがカロリーカットマヨネーズと呼ばれる商品の成分はマヨネーズを名乗れない内容になっているという理由だそうです。

通常のマヨネーズに対して油の割合を少なくする代わりに乳化剤・増粘安定剤・でんぷん等の添加物・卵白・水を加えかさ増し調製しているようです。

卵白も入れてるようですが、逆に言うとマヨネーズを作る過程で不要となった卵白部分を転用してると見れば良いと思います。
※マヨネーズは卵黄で作っています。

と、言うかカロリーカットマヨネーズは確かにカロリーは抑えられていますが、その代わりに様々な添加物が加えられていて健康被害を与えるタンパク加水分解物も加えられている商品もあるようで…これは規制してる国もある危険な添加物です。
カロリーを若干下げるに対してのトレードオフ要素にリスクを感じますね。
なので…できればカロリーカットマヨネーズは使用しない方が良いです

でも添加物云々での危険が…と言い始めると通常のマヨネーズもそれなりに添加物が入っていますからマヨネーズが好きな場合は自分で作るのが最善の策になりますね。
自分で作ればどれだけ油を加えてるか実感伴いますし、それは抑制意識にも繋がりますから。

手製マヨネーズについては以前紹介した「自然の八百屋さんへ行こう!」の下の方に作り方を書いますので気になる方はご確認下さい。


 2-3  ハチミツ 
国や地域によって蜜源となる花自体が少なくなっていることがあります。
自然由来の成分(この場合は花)で作ろうとするとどうしても価格が高くなりますね。
また一方では蜂一匹が生涯に作れる蜂蜜は約5g・・・ 蜂の確保も重要な問題です。

と、言うことで国内の生産は6%以下、殆どが外国産と言うか結局は中国産。
日本産の1/4〜1/8の低価格・そして中国の年間蜂蜜生産量は日本の192倍もあります。
生産量2位のトルコと比較しても約5倍あるので中国はダントツの生産量を誇っているのがわかります。

以下にはちみつの種類をまとめてますが、先ず分類上では、
  • 蜜源の花の種類
  • 加工方法
…の2通りの分類があります。
加工方法は下の表の通りですが、★マークを付けた3つが主なはちみつ加工法です。
巣蜜は巣に詰まったそのままの状態で、これはむしろデザートとしていただくものになります。
 ★ 純粋はちみつ  絞ったはちみつをろ過して瓶詰めしたもの
 ★ 精製はちみつ  はちみつを精製した甘味料
 ★ 加糖はちみつ  人工甘味料や水飴を添加したもの 蜂蜜含有量60%以上
 はちみつ加工食品  加糖はちみつと同じ製法。但し蜂蜜含有量60%以下
 巣蜜  蜂が巣に貯蔵した自然のままの状態のはちみつ

で、はちみつの闇の部分というかここで問題としている偽物の定義ですが・・・
2大分類の片方、「蜜源の花の種類」・・・これを無視するものです。

花ではなく単純に砂糖水のみで飼育している蜂が作るはちみつ…それって偽物ですよね。

中国からの輸入が殆どなのでここでは中国を例に出しますが
中国産蜂蜜の約40%は蜜源となる花を使用せず蜂に砂糖水のみを与え、その後の工程でも機械で強引に加熱を行い水分を飛ばしている…等の処理を行っています。

以下は日本への輸入量率から言ってある程度無視できるとは思いますが、粗悪品率(効率優先の利益主義)の上位には・・・・
韓国産100%インドネシア産100%イラン産100%インド産50%が並びます。
※一応注意ですが輸出品目数つまりサンプル数自体が少ない等の事情はあるかもしれません。

世界中に流通させてる量を考えるととても無視できる数字ではありませんが中国産は約40%ですから数字だけを見ると偽装率は意外に低いような気がしてきます。

ちなみに偽装率の一番低い(ある意味優秀といえる)オーストラリア産でも18.4%が粗悪品らしいです。確かに100%粗悪品という国々がある中での18.4%ならば低いと言えますね。

※古来からの製法を守っている養蜂家さんは、花が少ないシーズンにのみ砂糖水を餌として与えています。

殆どが偽物にまみれてるはちみつ… ぁあ〜そう言えば100円ショップにも置かれていますけど、はちみつとしては異常な安さですよね。まともに買ったら2,3000円以上はしますから。

・・・と、言うわけで結論ですけれど本物のはちみつがほしい場合は
国内の養蜂家さん 蜜源の花の記載のあるものを選べば良いと思います。


 2-4  味噌 
味噌は発酵食品。
ですが味噌商品には活きた酵素が入っているものと入っていないものの2つに別れます。
もちろん本来は活きているものの方が良いのですが常温下では発酵が進むことになります。

多くのスーパーでは普通に棚に置かれていまよね。
これは〜 既に発酵が停止されてる状態。酵素はもう活きていません。
保存期間や冷蔵コストが必要になるので、それらを考えると確かに大量の食料品を扱うスーパーのような店舗では酵素の活きた味噌は扱いにくいのかもしれません。

でも体内での本来の味噌効果を期待するのなら酵素が活きている商品を選びたい!
商品としては酵素が活きた味噌も存在するので、それを選べばいいのですが…見分け方は次の通りです。
  • 冷蔵(チルド)ケースで保管・販売されている。
  • 味噌のパッケージに呼吸口・空気穴・ガス抜きバルブ・脱気弁などがある。
  • 生みその表記がある
ともかく冷蔵ケースに陳列されててパッケージに穴が開られている商品を選んで下さい。
©合志物産館・志来菜彩

…と、いうわけで味噌の基礎はこのくらいにして主題である本物/偽物の話題に入りますが
八丁味噌問題 これけっこう深刻だと思います。
岡崎の八丁味噌って誰もが聞いたことくらいはあると思いますが、長く続いてきたこの伝統が消されるかどうか… 今ちょうどその瀬戸際なんだそうです。

本来の八丁味噌は「まるや」と「カクキュー」二社のみ
江戸時代から続く商標で、伝統を守り続けた昔ながらの製法で二夏二冬の2年間寝かせて作られています。

1332年創業の「まるや」には100年程度使っている木桶が200本ほどあるそうで、現在残っている中で一番古いのは1864年製の木桶… まさに伝統受け継ぐという感じがします。

重しには合計して3トンの天然石を円錐状に置いていくようですが、この石並べも重量配分を考えながらなので石積み職人の熟練技術が必要…と、機械化された現代の生産工程に対して愚直で真っ向勝負のようなスタイルが粋ですね。
©まるや

ところで、八丁味噌の危機にについてですが・・・
これにはGI(地理的表示保護制度)が深く関わってきます。
GI制度:
地域にある伝統的生産方法・気候・風土・土壌のような生産地特性が、商品の品質特性に結びついている産品が数多く存在しますが、それを保護するために産品の名称…つまり地理的表示を知的財産として登録する制度を言います。

…と、見る限りでは特に問題点もなく良いことのように感じます。
ところが、この制度には「国のお墨付き」「保護下に入る」という魅力があるため、そこに実益を結びつけるための大量生産化・効率性・多くの企業参加を促す勢力が発生することもあるようです。

 今までの流れ
八丁味噌協同組合(まるや・カクキューの2社)が2015年6月1日にGI登録に申請
 農水省:八帖町以外でも生産されているので八帖町限定ではなく愛知県全域にしないかと2社に打診
まるや・カクキューの2社:発祥は岡崎市八帖町であり、ここの気候・微生物によるものが大きいことから打診受け入れずと回答
2015年6月24日に愛知県味噌溜醤油工業協同組合(43社が加盟)が登録申請
農水省:愛知県味噌溜醤油工業協同組合と一緒にならないか?と2社に打診
まるや・カクキューの2社:愛知県味噌溜醤油工業協同組合内の製造のバラツキでは、とても八丁味噌の伝統を守っていくことができない・・・と申請取下


最後に回答している伝統を守っていくことができない…ですが、確かに40社以上が加盟していると当然基準の幅・バラツキが出てきますし、例えば本来の二夏二冬の2年間寝かせてじっくり熟成させていく部分も3,4ヶ月〜3年以上と加盟会社によってのバラツキが大きく出てくるのでこれは間違いなく味が変わってきますね。
伝統の味に大きくブレ幅が出てくるのはさすがに問題だと感じます。

また木桶ではなく今風のステンレスタンクを使用している会社も多いようなので、そこも気になるところです。
味噌って結局は生き物の活動で少しずつ熟成されていくものですから木桶に住み着く微生物って大事なんだと思います。ステンレスはその都度洗浄で清潔感はあるのでしょうけれどその度にリセットされてしまうんですよね。
全然関係ありませんが、水槽では全換水の際にバクテリアがリセットされてしまうので、水の立ち上げ直しにとても苦労します。

かつて、通っていた高校が醤油の街にあって駅を降りた時に漂ってくる醤油の香りがあったのですが、近代的な工場に変わった今は殆どそういう香りがなくなってしまいました。
つまり何が言いたいのかと言うとこういう伝統のあるモノって、製品のみでなく周囲の空気に与えるものがけっこう大きいんです。
地域への密着度を感じる部分でもあります。

それはともかくとして、、愛知県味噌溜醤油工業協同組合の方は既にGIが通っているので八丁味噌を名乗れますが、このまま放置だと2026年に伝統ある本物の方が八丁味噌を名乗れなくなります。
後追いで作られた制度が伝統を脅かしてしまう事態ってちょっと変ですね。

その一方で、2社の言い分のままだと八丁味噌に入り込める隙間が全くないのも事実です。
おそらく一番良いのは八丁味噌内にランクを作るとか、元祖名乗れるのは2社のみにするとか…そのへんが皆が幸せになれる落とし所だと思います。




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