今日のテーマはVTuberとメタバースです。
VTuberはYouTubeのような動画配信サイトを通して…って先入観で見ていると、メタバースとの親和性の高さに気付きにくいのかもしれません。
特にメタバースに近付いて行っている「おうち3D」には興味深いものがあります。
実は同社にはメタバースとして開発中のホロアースがあり近々ローンチしますが、情報は多くないのでこちらは最後に少しだけ触れます。
…と、いうわけで「おうち3D」を理解するために先ずはアバターモデルを知っておいて下さい。
※おうち3D…つまり自宅で3Dモデルを使ってVTuber配信すればそれは意味的に「おうち3D」ですから、ここで紹介していないタイプのおうち3Dも存在しますからそこは注意して下さい。ここではホロライブで行っているおうち3Dを取り上げます。
1 VTuberのアバターモデル
本題に進む前に予備知識として先ずはVTuberアバターについて簡単に触れておきます。
単純に2D・3Dの違い… ただそれだけですが、3Dを用意してるのなら2Dは用済み!というわけにはいきません。 その理由を理解しておく必要があります。
尚、ここで言う2DとはLive2D❐で制作された素材をVTube StudioやFaceRigなどを使いモーションを与えた(配信者の表情に従って自然に絵を切替える)アバターでの配信です。
これらモーションに反応する2Dを便宜上2.5Dと表現することもありますが、紛らわしいので以下Live2Dの加工が入ったものを2Dとして表現します。
尚、2年前に部活で扱ったでVTuberテーマのお話はこちらです❐。
(ページ内に貼っているいくつかの動画が再生不可になっていますが、チャンネル乗っ取りで潰されたそうです)
1-1 配信時の一般的な画面レイアウトは?
VTuberの配信時のアバターのアングルですが通常はバストショットフレームです。
内容次第ですが殆どのコンテンツの場合、アバターの僅かな身体の動きと顔表情が伝えられれば概ねOKですし歩き回る必要はありませんからCGの絵としては2Dで十分。
つまり技術としてはLive2DによるものでOKです。
2Dは自宅配信・ノートPCやスマホからでも配信できるお手軽さがあり一般的な配信スタイルです。
![]() |
![]() |
ロケット系VTuber | 政治系VTuber |
主題を画面中央に大きく出して端に配信者(アバター)はバストショットで表示。
1-2 2Dでは腕は動かせません
2D情報しか持っていない絵ですから意図して仕組みを用意しない限り腕は動きません。
だいたいは配信内容に合わせてゲームコントローラー持ってる絵とか腕ポーズ等を固定で充てます。
個人的によく視聴している「かすていらヨリコ」さんも右手はいつもこのカタチです。
また、2Dアバターの可動域はこれを少し見れば把握できると思います❐
…2Dながら上半身もけっこう動けますね。
ですから配信者が動き回る必要のあるコンテンツでない限り3Dに頼らなくても良さそうです。また、両者とも腕は動いていないことが確認できると思います。
※このコラボ配信の2人は日本・オーストリアのそれぞれの自宅から行っています。
SLの感覚通りの理解でOKです。
1-3 2DでOKなコンテンツはけっこう多い
上半身は大きく動くのに腕が固定…という問題はありますが殆どのコンテンツがバストショットで大丈夫ならば腕はスルーできますし、それより気軽に配信できるメリットの方が大きいと思います。
そして肝心の表情ですが2Dで可能な表情は次の動画を見ればわかると思います。
(動画尺:15秒)
全身で表現するようなコンテンツでない限り2D配信で必要十分。 |
※ホロライブでは2023/5頃から自宅配信で腕も指先も細かく動かせる新しいトラッキングシステムが導入されているようです(2023-5-3追記)
1-4 配信で3Dアバターを使う理由
ここからは先は3D配信の話となります。
2D配信に対し動きを全身で表現する必要のあるコンテンツの際は3Dアバターが必要です。
当然、3Dモデル制作・スタジオ向け3D関連機材調達・配信時のサポートスタッフ諸々が必要になるので大変な手間とコストがかかりますが2Dと比べ表現力が格段に違います。
つまり配信で3Dアバターを使う理由は、3Dで見せたいコンテンツがあるから…です。 |
1-5 VTuber・3D配信の現状
3D配信を行う場合… それは通常フルトラッキングを必要としますからSLユーザー的に判りやすく表現すればプロのダンサーの踊りをアニメデータ化する際に行われるモーションキャプチャーを行う手間と同種のものだと考えれば良いと思います。
そして、配信側はたいていの場合、可能であれば生配信として行います。
- これは生配信なのか?
- あるいいは録画編集の動画アップなのか?
…ですが3Dは配信者が1人で行うにはは荷が重いので当然サポートするスタッフが幾人か必要になりますし、それは設備を整えたスタジオで行うことになります。 |
1-6 参考動画
現在の3Dアバターの表現力を知るために役立ちそうなシーンを寄せ集めて2分少々にまとめました。
動画内に「CHECK」が出てきますが "次の部分を意識して" 見てみて下さい。
- CHECK1:人の自然な動作の再現性の高さ。モノの移動などの様子。
- CHECK2:指の動きに注目。ステージの演出やカメラワーク。
- CHECK3:空間内に複数人いる場合の参考。
- ・・・:つまり人の動きを3Dアバターに反映させたものでMMD❐ではありません。
(動画尺:2分10秒)
尚、最後の・・・についてですが、、片方のキャラのたどたどしい動きを見てもわかる通り、基本的に3D VTuberは人の動きをそのまま反映させ動いています。
ですから歌と踊りを披露する配信者は振り付け指導を受けたり定期的にダンスレッスン❐も行います。
3D配信は全般的に視聴者ウケの良いコンテンツが放送できますが、配信者はスタジオ(東京・大阪に多い)に出向く必要があります。遠方・海外在住者は頻繁に行えない。 |
※ 動画内に出てくるVTuberさんの紹介とリンクは 4 にあります。
※ ホロライブ所属VTuberさんもオリジナル曲披露の3Dライブが大量にありますが、通常の配信動画と違い二次利用は不可なので、この動画内の曲の部分はロート製薬公式VTuberココロさんのライブから切り抜いたものを使っています。
2 おうち3D
今回のテーマの本題ですが、”おうち3D”は開発途中のもので時折暫定バージョンとして配信に使われたりします。要は出てくる度に新しい機能が加わっているという感じです。
2-1 今回おうち3Dを取り上げようと考えた経緯
・・・と、いうわけで今まで「新しい配信スタイル」という受け止め方で見ていただけなのですが2月に宝鐘マリンさんが配信していた「おうち3D凸待ち」を見ていて現在のバージョンがメタバース要素を取り入れ始めていることに気付きました。
そもそもカバー(ホロライブ運営元)は新しいメタバースサービスの準備を始めていますが、おうち3Dが関わるかどうかは別として、バージョンアップ続けるおうち3Dの方にも注意を傾けておいた方がいいな…と判断しました。。
—————————————————————————
以前Quoraで「メタバース界の覇者はどうぶつの森ですか?」という質問に対しての回答リクエストを受けた際にその回答内でも触れています❐が、
|
皆が本気でメタバースを考え始めるということはユーティリティとして具体的な使い道の模索が始まるということです。
これはキラーコンテンツを誕生させる素地になりますね。
そして早い段階で”メタバースにおけるfps問題”にも気付くと思います。
※Second LifeがHMDを凍結した本質的な理由もここにあるのですが、これを乗り越えられない限りHMDで表示されるCGはVRChatやMinecraft… 良くてMeta社のHorizon Workrooms止まりです。
HMDを使用しなければ問題ありませんが、HMD必須の場合はCGクオリティは諦める必要があります。とてもSecond Life並の映像は期待できません。
—————————————————————————
とにかく今は多くの目がメタバースに集まるようにメジャーどころが参入もしくはそれっぽいことをやってくれることが重要だと思うんです。技術向上 & 曲解を防ぐためには情報量も必要ですからね。
その意味でキャラクター商売で成功しているホロライブがメタバースに向かうのは大きいです。
ホロライブには4700万人以上の厨(目の肥えた消費者)がいますから・・・
ホロライブ運営会社がメタバースへ進むのなら今後の動向には注目です。 |
2-2 mocopi(モコピ)
2Dにしても3Dにしてもアバターを動かすには自身の動きに追従させる手段が必要です。
トラッキングと呼びますが、全身をトレースする場合はフルトラッキングです。
これはVTuberに限らず仮想世界上の自分のアバターを(自分の動きと同期させて)動かす手段でもあります。要はモーションキャプチャですね。
mocopiはSONYが開発した全く新しいもので、今までのモーションキャプチャを置き換えてしまうくらいインパクトのあるものです。
センサーを介してキャプチャを行いますが映像見る限り追従精度はかなり高そうです。
ホロライブは独自に配信システムを構築していますが、今年1月以降は自社の配信システムとmocopiの併用も多く見られます。
と、ここまで簡単になってくると3D配信が一気に身近なものへと変わっていくと思います。
で、これは当然Second Lifeでも使える技術です。
ビューアが実装してくれればですけれど、今後のメタバース全般に活かされていてもおかしくない技術だと思います。
下に貼った動画はmocopi(モコピ)について話してるシーンに頭出ししてあります。
(3人のうち1人が mocopiを使っていますがその動きに違いが出ています)
2-3 おうち3D凸待ち
本題の動画アーカイブです。適当なところに頭出ししていますが時間がある時にでも見て下さい。安定してないバージョンのためか後半では操作の手を離れNPC化したアバターが暴走始めるシーンもあります。
※ブラウザの状態によっては上に貼った動画と同じものが出ることがあるので再読み込みして下さい。
(切抜き動画尺:1分41秒)
- アバターのアタリ判定がない。
- 風景がとても簡素なツクリ
風景の簡素化は当然としてVRMは当たり判定を追加できますからこれは負荷軽減を意識しているのかもしれません。但しホロライブの3Dアバターがこの形式なのかは未確認です。
モコピの参考用にショートも貼っておきます。
2-4 おうち3Dとは何なのか?
1-4 でクオリティ勝負に出てきてる現在の3D VTuberの配信動画を見た直後に、この「おうち3D」を見ると諸々グレードダウンしていると感じると思います。
名前の通りこれは配信者が自宅で気軽に3D配信できるようにしたものですから簡易化のためにトレードオフされた部分が存在します。
- フルトラッキングではないので動き要素の大半はスイッチで発動させてます。
- 自宅での1人配信用ですからカメラ操作は配信者自らが行います。
動き要素云々はSLユーザー的に表現するとAOに相当します。
この”おうち3D”はあくまでもトラッキングや諸々の手間を省くものなのでアバターの3Dモデルそのものはスタジオからの配信で使用するものと同じです。
で、それはそうと…「凸待ち」ですから自分がいる空間に他人を招き入れるということで上の動画内でも何人かが途中から入ってきます。
そしてコミュニケーションがとれるので最低限のメタバース要素はクリアしていますね。
おうち3Dはあくまでもホロライブ所属タレント向け(いわゆる自社用ツール)ですから空間容量としてはとても不特定多数を受け入れられるキャパはないと推察できますが、、
この仕組自体は小規模コミュニティ向け且つVTuberアバターモデル(VRM?)対応メタバースと考えればけっこう応用範囲の広いツールだと思うんです。
おうち3Dは所属タレント向けの3D自宅配信ツールでフルトラッキングは行いません。 でもmocopiと併用できてるみたいなのでモーションキャプチャの部分は問題なさそうです。 「コラボ機能」の呼称があるようですがこれはメタバースにおける空間共有そのものです。 |
3 ホロアース
今回はおうち3Dで話を進めましたが、メタバースとしてなら実はこちらが本命です。
ホロライブを運営するカバーが最初からメタバースとして準備しているサービスです。
但し、まだ情報が少ないので参考程度に留めておいて下さい。
3-1 ホロアースはメタバース?
これはサンドボックス型❐らしいので意味通りならばSecond Lifeと同じく完全自由環境です。
但しサンドボックス型だと「楽しみ方がわからない人が多数発生」することは開発側も認識しているようで最初はサバイバルゲーム要素を加える方向で開始するようです。
ですから最初はゲームの一つにしか見えないかもしれません。
でもVTuber要素もプラスするらしいのでそのあたりはカバーならではの試みに感じます。
予定では2023年夏前後にローンチということになっていて公開後も逐次フィードバックとバージョンアップを行い理想のカタチにしていく…ということだそうです。
メタバースとしてユーザー自らによる制作・特にアバターメイキングやユーザーが衣服を制作し販売する…等SLと同じことも(実装時期未定ながら)考えられています。
3-2 参考イメージ & 動画
僅かですがホロアースの画像と映像が出ています。
(動画尺:50秒・音なし)
3-3 まとめ
さて、現在のおうち3Dもメタバース的な要素を取り込み始めています。
そしてホロアースは最初からメタバースとしての開発です。
- おうち3Dは気軽に3Dモデルを動かせ空間内でコミュニケーションOKなのが利点。
- ホロアースは一般向けのメタバース。
希望的観測ですが、将来は自身のアバター操作用におうち3Dに実装されているような簡易なトラッキング機能をホロアースに組み込む方向に向かってくれると楽しめて良さそうです。
カバーは(既にたくさんのバーチャルタレントを抱えているので)他では真似できないメタバースサービスを提供できる企業だと思いますが、何れ視聴者もアバターとして配信者がいる空間にログインしてそこで様々なコンテンツを楽しむ…というメタバースを早々に構築するんじゃないでしょうか。
実際、ホロアース側ではそれに近いニュアンスで今後の計画を語っていますから、意外と早くに実現させるのかもしれません。
![]() |
3月19日幕張メッセ・hololive 4rd fes. Our Bright Paradeでのコンサート |
あたらしい日常は、すぐそばにいる。
ホロライブ、ホロアースを運営するカバー株式会社が2023年3月13日〜、新宿駅メトロプロムナード・JR渋谷駅ハチコーボード・東京メトロ9路線を対象に掲出しているブランディング広告です。
6パターンありますがそのうちの2つをここに貼っておきます。


3/13に新しく掲げられた広告でしかも何か語りたそうに感じたので、ここにも追加しておきましたけれど…もしかしてホロアースのローンチに関係するのかな?
4 リンク
今回のコンテンツでサンプルとして次の方々の配信画像を使用させていただいています。
個人的に注目しているVTuberでもありますが新しいコトを見つけるためにもオススメです。
1-1 の項目内でサンプルとして取り上げた各配信者さん
![]() |
ロケット系 VTuber 宇推くりあ -★Clear Rocket ch.★-❐さん ロケット好きすぎて捧げてしまってるのかと思うくらいの情熱で打ち上げや帰還ライブ他を見ながら現場の技術者?とも思えるくらい専門的な解説してくれます。 カシオミニが宝物みたいです。 |
![]() |
政治系VTuber カッパえんちょー❐さん 元々は芸能関係のコンテンツがメインでしたけれど、レーダー照射以降韓国絡み/政治の話題が多くなりました。政治系故ちょくちょく(23回ほど)チャンネルBANされてますがその都度新しくチャンネル立ち上げてがんばってます。また有料視聴版のサロンもあります。 |
![]() |
ご当地系VTuber かすていらヨリコ❐さん ご当地(長崎)の観光・イベント・食べ物の話題がメインですが歌枠や雀魂配信も多い感じです。 少し前に”ご当地VTuber”としてテレビで取り上げられていました(うちテレビないので家電屋さんに見にいきました) |
![]() |
Hololive English所属 Gawr Gura❐(通称サメ)さん 登録者数429万人! 個人的にホロライブを知るキッカケになったのはウェザーロイドさんが番組内でサメちゃんを紹介していたのが始まりです。 英語配信がメインで日本語はあまり得意ではないのでチャット欄は英語で書いた方が良いです。 |
1-4 の項目内でサンプルとして取り上げた各配信者さん
![]() |
Hololive-English所属 Takanashi Kiara❐さん ホロライブの英語圏向け配信を行うメンバーの1人で、普段は英語・日本語の配信を行っていますがオーストリア出身のため母国語はドイツ語です。(日本人並に漢字も読めるのでチャットは日本語で書いてもOK) ※現在は母国オーストリアからの配信です。 |
ロート製薬所属公式VTuber 根羽清ココロ❐さん いわゆる企業系VTuberですが、中の人はスキンケア製品開発部兼広報CSV推進部の社員さんです。 つまり外注ではなく社員が公式VTuberやっているケースです。 オリジナル曲をリリース❐するまでになりました。 |
|
![]() |
ウェザーニュースMC & 気象予報士 ウェザーロイドType A Airi(ポン子)❐さん。 誕生が2012年1月22日 8時41分36秒なので最古のVTuber 但し、最初の頃はYouTubeではなくウェザーニュース独自のインフラを使用して気象情報と共に配信していたのでYouTube進出はだいぶ後です。 |
2-3 の配信内に登場するホロメン
![]() |
ホロライブ所属 宝鐘マリン❐(船長)さん ホロライブ3期生でぺこらとともに現在ホロライブのツートップ(稼ぎ頭)みたいです。 たまにエロ方面にぶれたりします。 |
![]() |
ホロライブ所属 兎田ぺこら❐さん 船長と同じくホロライブ3期生でホロライブのツートップ。 ホロライブの配信を初めて視聴するなら先ずぺこら&船長から…というくらい人気があります。 |
2023年3月19日 Second Lifeデジアカ部活用テキスト
0 件のコメント:
コメントを投稿